D-HUB+ ロゴ
ビジネス・活用

執筆・監修: D-HUB+ 編集部(一次情報: 国土交通省ほか)/最終確認日: 2026-10-21

ドローン点検業務に参入するには|外壁調査・インフラ点検の許可・資格・記録

空撮や測量をしている中小のドローン事業者が、外壁調査や橋梁などの点検業務を受注するには、飛行の許可だけでなく、点検の制度の中で自社がどの役割を担うのかを押さえる必要があります。 この記事では、国土交通省の告示・ガイドライン・性能カタログをもとに、点検業務の制度上の位置づけ、点検案件で該当しやすい特定飛行、発注者に出す書類、参入前のチェックリストと受注から報告までの流れを整理します。

結論

  • 建築基準法第12条の定期報告の外壁調査では、令和4年の告示改正により、打診と同等以上の精度を有する無人航空機による赤外線調査が打診以外の方法として明確化されました。
  • 国土交通省が参照を求めるガイドラインでは、外壁調査の実施者は1級・2級建築士または建築物調査員資格者証を持つ者とされ、ドローン調査安全管理者と操縦者は別の役割として定められています。
  • 橋梁などの点検でドローンは点検支援技術の一つであり、結果の解釈や利用の責任は定期点検を行う者が持つと国土交通省の性能カタログに書かれています。
  • 点検案件は人口集中地区の上空、人又は物件から30m未満、目視外などの特定飛行になりやすく、許可・承認の確認、飛行計画の通報、飛行日誌の記載が必要です。
  • 受注の準備は、体制・書類・記録・機材・保険の5つをそろえ、案件ごとの飛行計画と記録を発注者に示せる状態にすることです。

1. 外壁調査:赤外線ドローンが使える条件

建築基準法第12条の定期報告制度では、外壁のタイル・石貼り(乾式工法を除く)・モルタル等について、平成20年国土交通省告示第282号が調査方法を定めています。国土交通省のページによると、おおむね6か月から3年以内に一度の手の届く範囲の打診等に加え、おおむね10年に一度、落下で歩行者等に危害を与えるおそれのある部分の全面的な打診等を行うこととされています。

この告示は令和4年1月18日付けで改正され(令和4年国土交通省告示第110号)、打診以外の方法として、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有する無人航空機による赤外線調査が明確化されました。国土交通省の技術的助言では、この告示は令和4年4月1日に施行されたとされています。

「打診と同等以上」かどうかの判定には、日本建築防災協会の委員会がまとめた「定期報告制度における赤外線調査(無人航空機による赤外線調査を含む)による外壁調査ガイドライン」を参照するよう、国土交通省が案内しています。ガイドラインのうち、ドローン事業者に関係が深い点は次のとおりです。

  • 役割の分担:外壁調査実施者(1級建築士、2級建築士、建築物調査員資格者証の交付を受けた者)が調査全体を統括します。赤外線調査実施者は熱画像の撮影・分析・浮きの判定に責任を負い、ドローン調査安全管理者はドローンの管理・運用全体を統括して操縦者に指示します。
  • 航空法の順守が前提:航空法等の関連法令に基づき、安全な飛行のための技術と安全管理の対策をとったうえで赤外線調査を行うことが前提です。
  • 打診との併用による確認:調査の前に同じ部位で打診と赤外線調査の両方を行い、赤外線で浮きを捉えられるかを確かめます。捉えにくい部位は測定条件を変えるか、打診で対応します。
  • 飛行計画書の作成と添付:ドローン調査安全管理者がドローン飛行計画書を作り、報告書に添付します。

つまり、操縦の技能だけでは外壁調査の報告は完結しません。自社に建築士や建築物調査員がいない場合は、調査会社や設計事務所と組み、ドローン調査安全管理者と操縦者の役割を担う形が現実的です。なお、同じ国土交通省のページには、令和7年6月30日付の落下防止措置付き外壁タイルの扱いに関する技術的助言と、令和8年7月21日付の事務連絡も掲載されているため、受注前に最新の資料を確認してください。

2. インフラ点検:ドローンは点検支援技術

国土交通省道路局は、橋梁・トンネルの点検に使える機器等を比較するための「点検支援技術性能カタログ」を公開しています。画像計測技術(橋梁)のカタログには、構造物の画像を撮影・計測する技術や、画像を処理して調書作成を支援する技術が掲載対象として挙げられています。

カタログの第1章では、ドローンを含む点検支援技術の使い方について次のように整理されています。

  • 定期点検は、定期点検を行う者が状態の把握から診断までを一連で行うもので、方法は近接目視が基本です。
  • 点検支援技術は、誤差特性や適用限界を把握したうえで機器等が保証する性能の範囲で使い、結果の解釈や利用には定期点検を行う者が責任を持ちます。
  • 機器の利用や選択は、構造物ごとに道路管理者との協議・承諾を経ることになります。

ドローン事業者の立場では、点検会社や建設コンサルタントの下で撮影・計測を担う形が中心になります。点検支援技術の公募は令和8年9月14日にも国土交通省から発表されており、カタログのページで最新の状況を確認できます。

3. 点検案件で該当しやすい特定飛行と手続き

外壁や橋梁の点検は構造物に近づいて撮影するため、次の特定飛行に当たりやすくなります。特定飛行の全体像は特定飛行とは?10類型の一覧で解説しています。

特定飛行点検案件で起きやすい場面必要な手続き
人口集中地区(DID)の上空市街地のマンション・ビルの外壁調査、市街地の橋梁許可。国交省の告示で指定された区域(工業専用地域内の区域など)は「人又は家屋の密集している地域」から除かれ、その場所での許可は不要
人又は物件から30m以上の距離を確保できない飛行外壁や橋桁に近づいて撮影する場合承認
目視外飛行建物の裏側や橋の下に機体が回り込み、直接見えなくなる場合承認
  • 許可・承認が不要になる場合:総重量25kg未満の機体で、立入管理措置を講じ、技能証明を受けた者が機体認証を受けた機体を飛ばし、飛行マニュアルの作成等の措置を講じる場合は、許可・承認を不要とできます(カテゴリーII)。
  • 申請の時期:国土交通省は、飛行開始予定日の少なくとも10開庁日以上前の提出を求め、3〜4週間程度の余裕を持った申請を勧めています。
  • 飛行計画の通報:特定飛行を行う前に、日時・経路などを記載した飛行計画を通報します。通報せずに特定飛行を行うと、30万円以下の罰金の対象です。手順は飛行計画の通報の解説をご覧ください。
  • 飛行日誌:特定飛行では、飛行・整備・改造などの情報を遅滞なく飛行日誌に記載します。備えない、記載しない、虚偽の記載をした場合は10万円以下の罰金の対象です。点検整備記録の付け方はドローンの点検記録の書き方にまとめています。

4. 発注者に求められやすい書類と記録

ここからは法令上の義務ではなく、受注の実務としての整理です。発注者や元請けは「この事業者に任せて事故が起きないか」を書類で確かめようとします。外壁の赤外線調査ガイドラインでは、ドローン飛行計画書に次の内容を盛り込むこととされており、発注者に出す安全関係の書類を作るときの目安になります。

  • 調査概要(建築物名、調査範囲、飛行許可・承認情報、資格、加入保険など)
  • 調査方法(撮影方法、調査環境条件、作業区域の配置図、飛行ルート図)
  • 仕様・性能等(調査責任者等の氏名、飛行経歴、使用機体・赤外線装置など)
  • 安全管理(役割分担・指揮系統、作業区域、安全装備・安全システム、緊急時の対応)
  • 添付資料(飛行許可・承認申請書など)

このほか、自社の飛行マニュアル、保険の付保証明、機体ごとの点検整備記録を求められることがあります。飛行マニュアルの作り方はドローン飛行マニュアルの作り方、保険の選び方はドローン保険の解説を参考にしてください。

5. 参入チェックリスト

点検案件の見積もりを出す前に、次の5つがそろっているかを確認します。

区分確認すること補足
体制外壁調査実施者・赤外線調査実施者・ドローン調査安全管理者・操縦者を誰が担うか外壁調査ではガイドラインが役割を定めています。建築士や調査会社と組む場合は契約で分担を明確に
書類飛行許可・承認書(包括申請を含む)、飛行マニュアル、技能証明、機体登録の情報案件の飛行が許可・承認の範囲に収まるかを見積もり前に確認
記録飛行日誌(飛行記録・日常点検記録・点検整備記録)、過去の飛行実績、ヒヤリハットの記録特定飛行では飛行日誌の記載が義務。実績と記録は発注者への説明材料にもなる
機材赤外線カメラと可視カメラ、予備バッテリー、係留装置などの安全装備外壁の赤外線調査では、ガイドラインが熱画像と可視画像の両方を報告書の項目に挙げています
保険第三者賠償責任保険の加入状況と有効期間総重量25kg以上の機体は加入が必要。25kg未満でも、ガイドラインは調査計画書に加入保険を書く項目を設けています

6. 受注から報告までの流れ

  1. 見積もり:対象物、調査範囲、求められる成果物(熱画像、可視画像、報告書の形式など)を聞き取り、役割分担を決めます。
  2. 現地調査:周辺の建物・道路・通行人、離着陸場所、電波や風の状況を確認します。外壁の赤外線調査では、日射や外壁の向きなど赤外線調査の適用条件もここで把握します。
  3. 許可の確認:飛行場所が人口集中地区に当たるか、30m未満や目視外の飛行になるかを判定し、手持ちの許可・承認の範囲で飛べるかを確認します。足りなければ個別に申請します。
  4. 計画の通報:特定飛行になる場合は、飛行前に飛行計画を通報します。
  5. 飛行:飛行前点検を行い、立入管理の体制をとって飛行します。安全の確保を最優先し、状況に応じて中止を判断します。
  6. 記録:飛行記録、日常点検記録、点検整備記録を付け、ヒヤリハットがあれば記録します。
  7. 報告書:撮影データと飛行計画書・記録をまとめて発注者に渡します。外壁調査では、外壁調査実施者が報告書一式を建築物の所有者等に提出します。

現地調査で使える危険の洗い出し方はリスクアセスメントのチェックリストで紹介しています。

7. 費用と見積もりの考え方

点検の料金は、対象物の規模、調査範囲、飛行の手続き(個別申請の有無)、補助者の人数、報告書の内容によって大きく変わります。この記事では金額の目安は示しません。見積もりでは、現地調査・申請・飛行・データ解析・報告書作成の工程ごとに工数を分けておくと、発注者に内訳を説明しやすくなります。

太陽光パネル・橋梁・建物の点検でドローンがどう使われているかの例は、ドローン点検の活用事例をご覧ください。

8. D-HUB+で案件ごとの安全管理を記録する

D-HUB+(ディーハブプラス)は、案件ごとの飛行計画と飛行・点検の記録を1か所にまとめ、発注者に安全管理の状況を示しやすくするWebアプリです。オープンβ期間は全機能無料で、Googleアカウントで登録できます。

  • 案件ごとの飛行計画:離着陸地点からDID(人口集中地区)を自動判定し、計画ごとに飛行前チェックリストを自動生成して確認状態を保存します。計画はA4で印刷・PDF保存でき、DIPS入力用に計画内容を確認できる画面もあります。
  • 点検整備記録:定期点検、消耗品交換、修理、ファームウェア更新を、機体ごとに残せます。
  • 飛行ログとヒヤリハット:飛行ログと飛行後の振り返り、ヒヤリハット・インシデントを記録できます。
  • 機体と期限の管理:機体登録日を入れると登録有効期限の目安と残り日数を表示し、期限の60日前・30日前と期限切れにアプリ内でお知らせします(正式な期限は国土交通省の登録ポータルで確認してください)。技能証明・許可・保険などの期限は、期限つきToDoとして自分で登録して管理できます。

複数の機体と案件を抱える事業者向けの使い方は、中小ドローン事業者向けの使い方にまとめています。

9. よくある質問

ドローンの赤外線調査で、外壁の打診は不要になりますか?

国土交通省は令和4年1月18日付けで平成20年国土交通省告示第282号を改正し、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有する無人航空機による赤外線調査を、打診以外の調査方法として明確化しました。ただしガイドラインでは、調査の前に同じ部位で打診との併用による確認を行い、赤外線で浮きを捉えにくい部位は測定条件を変えるか打診で対応するとされています。

外壁調査をドローンで行うには、どんな資格が必要ですか?

国土交通省が参照を求めるガイドラインでは、外壁調査を行う「外壁調査実施者」は1級建築士、2級建築士、または建築物調査員資格者証の交付を受けた者とされています。ドローンの管理・運用を統括する「ドローン調査安全管理者」と「操縦者」は別の役割として定められているため、ドローン事業者は建築士や調査会社と組む形で役割を分担するのが現実的です。

橋梁などのインフラ点検は、ドローンの撮影だけで完了しますか?

国土交通省の点検支援技術性能カタログでは、定期点検を行う者が状態の把握から診断までを一連で行い、点検支援技術の結果の解釈や利用に責任を持つとされています。機器の利用は構造物ごとに道路管理者との協議・承諾を経るとされているため、ドローンは点検を支援する技術という位置づけです。

点検案件では毎回、飛行の許可・承認が必要ですか?

人口集中地区の上空、目視外、人又は物件から30m以上の距離を確保できない飛行などの特定飛行に当たる場合は、原則として許可・承認が必要です。総重量25kg未満で、技能証明を受けた者が機体認証を受けた機体を立入管理措置を講じて飛ばし、飛行マニュアルの作成など必要な措置を講じる場合は許可・承認を不要とできます。特定飛行を行うときは、飛行計画の通報と飛行日誌の記載も必要です。

ドローン点検の費用はどのくらいですか?

この記事では金額の目安を示していません。建物や構造物の規模、調査範囲、飛行の手続き、報告書の内容によって大きく変わるため、現地調査をしてから案件ごとに見積もるのが基本です。

無料テンプレート

飛行前チェックリストをダウンロード

機体・空域・気象・運用体制・記録まで、現場で確認しやすい項目に整理しています。

無料で受け取る