執筆・監修: D-HUB+ 編集部(一次情報: 国土交通省ほか)/最終確認日: 2026-10-21
レベル3.5飛行とは?条件・申請の流れと物流・点検での使い方
レベル3.5飛行は、無人地帯での目視外飛行(レベル3飛行)で必要だった補助者や看板の配置を、機体に取り付けたカメラでの確認に置き換えられる制度です。2026年9月29日の審査要領改正で、やむを得ず人口集中地区などの密集地域を経路に含める場合の安全確保措置も示されています(後述)。 国土交通省が2023年12月に新設しました。この記事では、条件、申請の流れ、包括申請との関係、2025〜2026年の改正点を国交省の資料で整理し、点検・物流で使う中小事業者向けに飛行前の確認項目と記録の残し方をまとめます。
結論
- レベル3.5飛行はカテゴリーⅡ飛行(レベル3飛行)に該当する飛行形態で、補助者・看板による立入管理を機上カメラでの確認に代替するものです。
- 前提要件は、機上カメラと地上モニター等で経路直下と周辺に第三者がいないことを確認できること、第三者賠償責任保険への加入、目視内飛行の限定解除を受けた技能証明の保有の3つです。
- 移動中の車両・列車・船舶の上空は道路などを一時的に横断する場合に限って通過でき、歩行者など第三者の上空は飛べません。
- 申請は航空局と運航概要宣言書を調整して航空局管理番号を受けた後、DIPS2.0で場所を特定して行います。包括申請の許可ではレベル3.5飛行はできません。
目次
1. レベル3.5飛行とは
レベル3飛行(補助者を配置しない目視外飛行を無人地帯で行うもの)では、経路下に第三者が立ち入る可能性を排除できない場所で、補助者の配置や看板での周知といった追加の立入管理措置が求められてきました。 道路や線路を1本またぐだけでも人を立てる必要があり、物資輸送や長い距離の点検では負担が大きくなります。
そこで国土交通省は、ドローンによる物資輸送やインフラ点検の事業化を進める目的で、2023年12月に「レベル3.5飛行」制度を新設しました。最初の承認は2023年12月8日、中山間地域での配送事業を目指す株式会社NEXT DELIVERYの申請に対して出されています。
押さえておきたいのは、立入管理措置そのものがなくなるわけではない点です。撤廃されるのは補助者や看板による管理の部分だけで、経路下に立入管理区画を設定することや、第三者が存在する可能性の低い場所を選ぶことなど、レベル3飛行の他の要件はそのまま残ります。 許可・承認が必要な飛行の全体像は特定飛行とはで整理しています。
2. レベル3・レベル3.5・レベル4の違い
| 項目 | レベル3 | レベル3.5 | レベル4 |
|---|---|---|---|
| 飛ぶ場所 | 無人地帯(第三者が立ち入る可能性が低い場所) | 無人地帯。交通量が少ない道路・鉄道などの一時的な横断は可 | 有人地帯(第三者上空) |
| 飛行カテゴリー | カテゴリーⅡ | カテゴリーⅡ(レベル3飛行に含まれる) | カテゴリーⅢ |
| 立入管理の方法 | 補助者の配置、看板・周知など | 補助者・看板の代わりに機上カメラで確認(立入管理区画の設定は必要) | 立入管理措置を講じない |
| 移動中の車両等の上空 | 補助者等で立入りを管理 | 技能証明と保険を条件に、一時的な横断で通過可 | — |
| 操縦者・機体 | 審査要領の基準への適合を個別に審査 | 技能証明(目視内飛行の限定解除)。等級は問わない | 一等の技能証明と第一種機体認証 |
レベル4の要件と申請の流れはレベル4はいつから?解禁と申請の流れで解説しています。
3. レベル3.5飛行の条件
国土交通省の説明資料と審査要領(カテゴリーⅡ飛行)から、実務で押さえる条件を整理します。
- 機上カメラでの確認:機体のカメラと地上に置くモニター等で、進行方向の経路の直下とその周辺に第三者の立入りがないことを確認できることを、事前に確かめておきます。カメラ・モニター・通信装置の構成を変えるときも、同じ確認をやり直します。
- 技能証明:飛行させる機体の種類・重量に対応し、目視内飛行の限定解除を受けた技能証明が必要です。一等・二等の種別は問われません。夜間に移動中の車両等の上空を通過する場合は、昼間飛行の限定解除も受けている必要があります。
- 第三者賠償責任保険:車両との接触や交通障害などの不測の事態に備え、十分な補償が可能な保険に加入します。補償額は一律に決められておらず、飛行内容に応じて事業者が設定します。保険の考え方はドローン保険の選び方を参考にしてください。
- 運航条件の事前設定:視程、道路等を通過するときの速度と高度、通過を決める位置と高度、通信速度など、想定されるリスクと対策を運航条件として事前に決め、その条件どおりに飛ばします。
- 緊急着陸地点:道路・鉄道・船舶航路への墜落を避けるため、緊急着陸地点の選定などの安全対策を設けます。
できること・できないことの線引きは次のとおりです。
- できる:交通量が少ない道路・鉄道・船舶航路を一時的に横断し、その際に移動中の車両・列車・船舶の上空を通過すること。第三者の出入りがない一時的な住宅等の上空の通過。
- できない:歩行者など第三者が経路下にいる状態(有人地帯上空)での飛行。高速道路や交通量の多い一般道・鉄道の上空やその付近の飛行。
国土交通省が示す前提要件は上記の機上カメラ・保険・技能証明で、機体認証はこの要件に含まれていません。機体側は、目視外飛行(補助者なし)などの追加基準への適合を申請時に示します。
4. 申請の流れ(運航概要宣言書とDIPS2.0)
レベル3.5飛行は、通常のレベル3飛行の申請とは異なる簡素化された手続きで申請します。流れは2ステップです。
- 航空局と運航概要宣言書を調整する:まず航空局の相談窓口に相談します。窓口は通常の申請先である地方航空局ではなく、本省航空局(無人航空機安全課)です。送られてくる「運航概要宣言書」で、飛行の概要、技能証明、保険、機上カメラなどの要件を満たしていることを事業者自身が宣言し、調整が済むと「航空局管理番号」が発行されます。宣言書の内容が変わらなければ、次回以降このステップは省略できます。
- DIPS2.0で許可・承認を申請する:2024年12月16日から、DIPS2.0での電子申請に対応しています。簡易カテゴリー判定画面で「航空局と事前調整済みの立入管理措置を講じる(レベル3.5飛行関連)」を選び、航空局管理番号を入力します。飛行経路は出発地・経由地・到着地が分かる形で記載します。飛行マニュアルは、機上カメラ装置により立入管理措置をとる目視外飛行向けの航空局標準マニュアルの使用が基本です。
運航概要宣言書の提出により、飛行経路(別添資料1)や飛行マニュアル(別添資料7)などの一部資料は提出不要になります。ただし提出不要の資料も事業者が作成して手元に備えておく必要があり、航空局から求められたら速やかに提出します。備えておく資料には、運航条件を定めた資料、立入管理区画を地図上に示した資料、機体の初期故障期間を超えた十分な飛行実績を示す資料などがあります。
包括申請との関係
補助者を配置しない目視外飛行は「場所を特定した」申請で許可・承認を得る必要があります。国土交通省は、包括申請を含む承認を既に取得していても個別の申請手続きが必要としています。日頃の点検業務で使っている包括申請の許可だけでは、レベル3.5飛行はできません。
DIPS2.0の基本操作はDIPS2.0の使い方をご覧ください。国土交通省は、申請書類を飛行開始予定日の少なくとも10開庁日前までに出し、3〜4週間程度の余裕をもって申請するよう案内しています。
5. 2025〜2026年の改正と注意点
- 2026年9月29日:密集地域を経路に含む場合の取扱いを明確化:カテゴリーⅡ飛行の審査要領が改正され、補助者を配置しない目視外飛行で、やむを得ず人又は家屋の密集している地域の上空を経路に設定する場合は、第三者と物件への危害を防ぐ十分な安全確保措置を講じることが明記されました。あわせてレベル3.5飛行事例集も更新されています。
- 2025年12月18日施行:民間講習等による手続き省略の廃止:「ホームページ掲載無人航空機」と「ホームページ掲載講習団体等が行う技能認証」による申請手続きの一部省略が廃止されました。民間資格で書類を省略していた事業者は、申請時の書き方を見直す必要があります。
- 航空情報のための通知:地上で航空機の状況を常に確認できない場合は、飛行を行う日の1開庁日前までに、飛行日時・経路・高度・機体数などを管轄の地方航空局へ通知します。2026年4月21日に通知の方法と様式(飛行内容通知書)が更新されています。
2026年9月版の事例集には、離着陸地点が人口集中地区(DID)内にある病院からの山間部へのお弁当配送で、人流調査を踏まえたルート設計と離着陸地点での立入防止措置により「DIDを含むレベル3.5飛行」を行った例が載っています。DIDに当たるかの確認方法は飛行計画の作り方でも触れています。
6. 中小事業者の使いどころと飛行前の確認
使われる場面
国土交通省は、レベル3.5飛行が物流だけでなくインフラ点検や空撮など様々な事業飛行で使われているとしています。経路の基本は山、海水域、河川・湖沼、森林、農用地など第三者が存在する可能性の低い場所なので、典型的には次のような業務が対象になります。
- 山間部・離島への物資輸送:途中で道路を横断する配送ルート。物流の動向はドローン物流の現状にまとめています。
- 送電線などの設備点検:事例集では、山間部の送電線点検で、樹木で視界が遮られて目視内では連続点検が難しかったところ、レベル3.5の目視外飛行と自動飛行の組み合わせで1回に数kmの連続点検ができるようになった例が紹介されています。この事例では、LTE通信が不安定な場合に備えた体制づくりが重要とされています。
- 河川沿いの巡視・点検:河川を軸に経路を引き、橋や道路との交差部を一時的に横断する使い方です。
飛行前の経路チェックリスト
航空局標準マニュアルと審査要領の要求を、現場で使える形に並べ直しました。自社の飛行マニュアルや運航条件に合わせて調整してください。
- □経路が山・河川・森林・農用地など第三者が存在する可能性の低い場所を中心に引けているか
- □横断する道路・鉄道が、高速道路や交通量の多い一般道・鉄道に当たらないか
- □経路上の各横断ポイントで、通過する速度・高度と「通過を決める位置」を決めたか
- □機上カメラの映像で、進行方向の経路直下と周辺の歩行者等を確認できることを、実際の機材構成で事前に確かめたか(カメラ・モニター・通信機器を変えたら再確認)
- □通信が不安定になりやすい区間がないか、途絶したときの手順を決めたか
- □道路・鉄道への墜落を避けるための緊急着陸地点を、経路ごとに選んであるか
- □飛行前に経路と周辺を現場確認したか
- □飛行計画をDIPS2.0で通報し、他の無人航空機の飛行計画を確認したか
- □航空機の状況を常に確認できない場合、飛行内容を1開庁日前までに地方航空局へ通知したか
残す記録
許可・承認を受けた飛行(特定飛行)では、飛行計画の通報と飛行日誌の作成が必要です。レベル3.5飛行用の航空局標準マニュアルでも、飛行計画の通報、飛行の都度の飛行記録、定期的な点検整備と点検整備記録の作成を求めています。 飛行日誌の書き方はドローン飛行日誌の書き方を参考にしてください。 加えて、横断ポイントで決めた運航条件や、通信が途切れかけた・歩行者を見つけて中止したといった出来事を残しておくと、運航条件の見直しや、航空局から資料を求められたときの説明に使えます。
7. D-HUB+で飛行計画と記録をそろえる
D-HUB+(ディーハブプラス)は、飛行前の確認から飛行後の記録までを1か所で扱えるWebアプリです。オープンβ期間は全機能無料で、Googleアカウントで登録できます。
- 飛行計画:離着陸地点からDID(人口集中地区)を自動判定します。計画ごとに飛行前チェックリストを自動生成し、確認状態を保存できます。計画はA4で印刷・PDF保存でき、DIPS入力用に計画内容を確認できる画面もあります。
- 飛行ログと振り返り:飛行ログと飛行後の振り返りを残せます。
- ヒヤリハット・インシデントの記録:通信の不安定や中止判断などを記録し、次の運航条件の見直しに使えます。
D-HUB+はDIPS2.0への自動申請や航空局への通知は行いません。申請・通報・通知はDIPS2.0など国土交通省の窓口で行ってください。
複数の機体や現場を回す事業者向けの使い方は中小ドローン事業者向けの使い方で紹介しています。
無料で飛行計画と記録を管理する8. よくある質問
レベル3.5飛行はカテゴリーⅢ(レベル4)ですか?
いいえ。国土交通省の資料では、レベル3.5飛行はカテゴリーⅡ飛行(レベル3飛行)に該当し、カテゴリーⅢ飛行には当たらないと整理されています。歩行者などの第三者の上空を飛ぶことは認められていません。
レベル3.5飛行に必要な条件は何ですか?
国土交通省は前提となる要件として、機上カメラと地上のモニター等で進行方向の経路直下と周辺に第三者がいないことを確認できること、十分な補償が可能な第三者賠償責任保険への加入、目視内飛行の限定解除を受けた技能証明の保有の3つを挙げています。
技能証明は一等が必要ですか?
一等・二等の種別は問われません。ただし、飛行させる機体の種類・重量に対応し、目視内飛行の限定解除を受けた技能証明である必要があります。夜間に移動中の車両等の上空を通過する場合は、昼間飛行の限定解除も必要です。
包括申請の許可でレベル3.5飛行はできますか?
できません。補助者を配置しない目視外飛行は「場所を特定した」申請で許可・承認を得る必要があり、国土交通省は包括申請を含む承認を既に持っていても個別の申請手続きが必要としています。
レベル3.5飛行はDIPS2.0で申請できますか?
できます。2024年12月16日からDIPS2.0での電子申請に対応しています。先に航空局と運航概要宣言書を調整して「航空局管理番号」の発行を受け、その番号を申請画面で入力します。
参照元・更新情報
- 国土交通省 無人航空機の飛行許可・承認手続(レベル3.5の位置付け、場所を特定した申請、事前相談窓口、更新情報)
- 国土交通省 カテゴリーⅡ飛行(レベル3.5飛行)の許可・承認申請について(制度の趣旨、3つの前提要件、運航概要宣言書)
- 国土交通省 レベル3.5飛行のDIPS2.0を用いた電子申請について(2024年12月16日対応、航空局管理番号、提出不要資料)
- 国土交通省 航空局標準マニュアル(機上カメラ装置により立入管理措置をとる目視外飛行)
- 国土交通省 無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行、2026年9月29日最終改正)
- 国土交通省 レベル3.5飛行 事例集(令和8年9月)
- 国土交通省 報道発表 本邦初のレベル3.5飛行の承認(2023年12月8日)
- 国土交通省 無人航空機レベル4飛行ポータルサイト(レベル4の定義と要件)
最終確認日: 2026-10-21
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